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 タイ東北部のローイエットで、バスの前面にお線香が供えられているのを見た。このようなバスを見たのは、後にも先にもこの時だけだが、もしかしたら一般的なものなのかも知れないし、地域的あるいは時期的な風習なのかも知れない。

 もしかしたら人身事故を起こしてしまったのかも知れないし、交通安全祈願のためかも知れない。タイのバスやタクシーでは、ダッシュボードなどに小さな仏像を並べているのを、結構よく見かける。そうしておくと事故が起こらない、あるいは事故を起こしても怪我しなくてすむ、と半ば信じきっている体で、嬉しそうに語るドライバーに出会ったことも一回や二回ではない。そんな運転手の運転が丁寧なものかというと、必ずしもそういうわけではなく、我々の感覚からいうと、滅茶苦茶にぶっとばしたり、無茶な追い越しや割り込みなども平気でやったりもする。

 誰から聞いた話だったか失念してしまったが、タイでは道路の真ん中にもう一つ車線がある、と冗談っぽく言われているそうだ。確かに、見通しが悪いところでも、遅い車がいたらすごいスピードのまま平気ではみ出して追い越しをかけるのは、よくあることだ。対向車も避けてくれるものと思っているというか、みんなが真ん中の車線の存在、そこに対向車が来る可能性を考慮して走るのが暗黙のルールになっている、という風に見える。

 上記はほんの一例であるが、そんなタイの交通事情で、大きな交通事故が少ないわけがない。2015年のWHO(世界保健機構)のレポートによると、単位人口あたりの交通事故死亡者数は、タイが世界2位だったとのこと。タイらしいと言えばそうなのだが、やはり信心に頼るよりも、ドライバーの意識向上などの自助努力が必要だとは思う。それを促すには、やはりまずは現在はかなり甘いと思われる交通関連の法律を、整備したり正しく執行したりして、矯正していくしかないのかも知れない。

【写真】2007年5月
【文章】2016年11月
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