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 時は2006年のゴールデンウイークの4月末、まずはバンコクに飛び、入国してその日の夜にバンコクのファランポーン駅から夜行列車に乗って、翌朝にはタイ東部シーサケットの街に到着した。以前にも列車に乗って停車した時に車窓から眺めたことはあったが、降り立つのは初めてだった。

 まだ午前7時にもなっていない時間であったが、駅の近くの食堂などは、早くも活気で満ちようとしているところだった。イサーン(タイ東北部)ではよく見られる光景だが、いくつかの店先ではガイヤーンを焼いていて、香ばしい匂いが立ち込めていた。

 ガイヤーンのガイは鶏、ヤーンは焼く、という意味だ。すなわち直訳すると焼き鳥である。以前の記事でも記したが、日本語では単に『焼く』と言っている調理法は、タイ語ではもう少し細かく分かれる。ヤーンは、切り身などを炭火などでじっくり焼く、という場合に使う。

 もう10年以上も前のことなので、雰囲気も変わっていることだろう、とは思った。場所は覚えているので、Googleのストリートビューで見てみた。


 少しレイアウトなどは変わっているが、お店はそのままのようだった。コンロや足元のチリトリなんかも変わりない雰囲気のままだ。

 旅の写真は訪問したときのその日・その時だけを捉えたものである。街中のなんでもない光景もどんどん変わって行くし、遺跡でさえ時は止まっていない。二度とは見られない風景も多い中で、同じような光景が残っていると、少し懐かしい気持ちにもなるのだ。しばらくぶりに帰郷する時と似たような感覚である。

【写真】2006年4月
【文章】2016年12月
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