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 ナーンはタイ北部の同名の県の県都である。古くはランナータイ王国の一部として栄えたが、ビルマ軍の占領によって街は荒廃した。現在の街は近世に再建されたのであるが、観光客も少なく、静かでのんびりとした小さな田舎街である。

 この写真は1月末頃に訪問したときのバスターミナルだが、ここではもちろん、この街に居る間、他の観光客らしい人には一切会わなかったくらいだ。

 以前の記事でも触れたことではあるが、たとえ県都のバスターミナルであっても、観光客の少ない田舎のほうに行けば、行く先表示でさえABCのアルファベットは表示されておらず、タイ文字だけだ。日本でも昨今は主要交通機関や観光名所を中心に英語や中国語・ハングルなどの表記や案内が増えたが、一昔前はちょっと都会を離れれば日本語表記しかないことが多かったのと同じだ。

 見慣れた形ではないのでとっつきにくいが、タイ語やハングル等の文字は基本的に表音文字で、表記はアルファベットの組み合わせである。意味はわからなくても、文字の読みを覚えておけば、ある程度の音読はできる。旅人にとって特に重宝するのが、こういったバスや案内板の行先表示だと思う。言葉をたくさん覚えるのは大変だが、いくつかの子音と母音の文字を覚えるだけならそう難しくはないので、旅行者にはお勧めだと私的には思っている。

 例えば、一番手前の14番の行き先นครสวรรค์はナコーンサワン。小さくて見えにくいが4番はクルンテープ、すなわちバンコク行き。私の場合、行く先も決めずに放浪していることも多いので、その街のバスターミナルに着いたら、どこ行きのバスがどれくらいの時間や頻度で出ているのか、ザッとチェックする。その上で、次の日以降どの方面に向かおうかな、と胸算用するのだ。もちろんそれが狂うことも良くあるが、その時にも交通網を頭に入れておくと、次善の策を講じるのが楽になる。

【写真】2008年1月
【文章】2017年1月
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