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 先日の記事で、山崎のサントリー蒸溜所前のJRをくぐる小さなトンネルを紹介した。そこからもう少し京都市内方面寄りで、これまた先日紹介した犬川の三連橋との中間地点くらいにも、小さな鉄道をくぐるトンネルがある。

 正式名称は円明寺架道橋(えんみょうじかどうきょう)と言うが、地元ではねじりマンポとだけ呼ばれているようだ。マンポとはこのような鉄道等をくぐる歩行者や農業用水用の小規模なトンネルのことであるが、特にねじりマンポと呼ばれるのは、煉瓦がねじれたように積み上げられているものだ。

 このトンネル、子供はともかく、標準的な身長の大人なら立って歩くことは不可能で、人がやっとしゃがんで歩けるくらいの高さである。だが遺構というわけではなく、今でも近隣住民が日常的に使用している。

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 ご覧の通り、煉瓦がねじれるように積み上げられているのがよくわかる。

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 これらのトンネルは、元々田畑等があったところを分断して鉄道を敷設したために、人や用水の往来を確保する目的で作られたものである。

 上述のリンク記事のトンネル(マンポ)や三連橋でもお分かりの通り、京都-大阪間の東海道本線沿い、特に向日市~茨木市のあたりは、こういった明治時代初期の鉄道敷設時の構造物がそのまま残って使用されているところは多いようだ。付近ではねじれてはいなくても、古いレンガ造りのマンポはいくつか見られる。

 蹴上の琵琶湖疏水のトンネルが有名であるが、このようなねじれマンポは日本に20~30箇所程度しか残されておらず、関西を中心とした西日本に多く残されているそうだ。

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 なぜこのようにねじれた構造にしたのかと疑問に思ったが、ちょうどこのねじれマンポのわきに説明書きがあったので解決した。

 なるほど、強度を保つためにレールに対して垂直に煉瓦を設置していくと、トンネル自体は斜めになっているので、トンネル側から見るとだんだんズレてくる。つまりねじれる。昔の技術者の工夫と知恵が編み出したものであるわけだ。これこそ機能美というものではないか、と思った。



 ちなみにこのねじれマンポがあるのは住宅地の中で、付近の道も狭い。車で来ても止めるところはないし、近隣住民の迷惑になるのでやめたほうがよい。JRなら長岡京駅と大山崎駅の間くらいで、歩くのは少々遠い。一応阪急西山天王山駅が一番近いが、それでも歩くには少し距離がある。

ほんの小さな生活者用のトンネルを見るためだけに来るにはあまりにも苦労を要するし、恐らくこれを見るためだけに来るのはほんの少数のマニアな方だけだろうとは思うが、隠れた名所の一つでもある。

【写真】2017年7月
【文章】2017年7月


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