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 こちらはタイのロッブリーの遺跡で見かけたプルメリアの花。タイの花というと、南国の日差しを浴びた原色系のカラフルな花々を想像してしまいがちだが、こういった純白の花も結構好まれるように思う。

 プルメリアはハワイやタヒチなどの太平洋に浮かぶ島々で、よくレイ(頭や肩などにかける飾り)に好んで使われる花であるが、『こういう形で木に咲くんだなぁ』と思ったものだ。

 タイでは、プルメリアはลีลาวดี(リーラーワディー)と呼ばれている。美しい立居振舞を表現している言葉らしい。私からするとなんともイメージにあった意味合いだと思うが、実はこの呼び名は現国王陛下の妹君シリントーン殿下が付けられたもので、昔からそう呼ばれていたわけではない。

 プルメリアは古くはลั่นทม(ラントム)と呼ばれていた。『悲嘆』という意味合いのระทม(ラトム)と語感が近い。それと関係があるのかどうかはわからないが、仏塔やお墓の脇によく植えられており、墓場や死人を連想させる花だったそうだ。王女殿下から新たな呼び名を賜って話題になるまで、この花は基本的に庶民には忌んで疎んじられており、一般家庭の庭や公園などで植えられるものではなかったのだという。

 太平洋の島々における華やかなイメージとは対照的なのが興味深い。タイは熱心な仏教の国なので、もしかしたら白く大きな花びらを広げる様が、イメージで蓮華と繋がったのかも知れない、と妄想してみる。

【写真】2006年8月
【文章】2017年11月

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