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 メキシコのチワワ州シウダー・フワレスは同州最大の都市で、アメリカのテキサス州エルパソとの国境を有する。

 正確な時期は覚えていないが、21世紀に入った頃より『戦争・紛争のある地域を除くと世界で最も危険な都市』とされていた。国境の街の工業は著しい発展をとげたが、貿易関連の国の政策による農村の疲弊や溢れた失業者の流入によって治安が悪化し、暴行や誘拐、それに密入国などが横行した。加えて麻薬カルテル間の抗争が勃発し、軍や警察も絡んで、街中でも銃撃戦が繰り広げられることも珍しくはなかったそうだ。

 2012年頃より他所に抜かれて『世界で二番目に危険な都市』になったらしいが、一位が二位になったところで何ら変わることはないだろうし、よく考えてみれば他所が悪くなっただけでシウダー・フワレスの治安が良くなったことを示しているわけではない。

 私がシウダー・フワレスを訪れたのは仕事のためだった。訪問先の会社でも、すぐ前の道で銃撃戦があったのだと聞いた。そのためか会社の警備は厳重で、刑務所のような高い壁に囲まれ、大きく重い門は社員が出入りするときだけ開かれていた。

 三日間ほど滞在したが、ほとんどホテルと会社の往復だけしかしていない。忙しかったこともあるが、治安がよくないので、あまり出歩かないようにと言われてもいた。出かけたのは近くのレストランへの食事と、スーパーに買い物に行ったくらいだ。そのおかげか危険な事件もなく三日は過ぎた。

 治安が悪いと言っても、別にスラム街が広がっているわけではない。一見しても普通の街が広がっているだけだった。何か事件があれば一変するのだろうけれど、普段は空気がピリピリしているわけでもなく、どちらかというとのんびりとした雰囲気だったように思う。もっとも、私はほんのごくわずかな一部しか見ていないのだけれど。

 この写真の日は、私の誕生日だった。たまたま危険と言われる場所で誕生日を迎えることになってしまったのだけれど、異国の青い空が祝福してくれているような気がした。

【写真】2015年9月
【文章】2018年4月

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