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 このダイナミックな風景は遠い異国のようにも思えるが、日本国内である。場所は北海道の積丹半島の神威岬。半島の北西部から日本海に突き出した岬である。

 当時の解像度の低いデジカメでもこれだけ綺麗に写るのである。実際に見たときには、その雄大さに何も言えなくなった。こういうのを心が打たれるというのであろう。

 海の青さがまた素晴らしい。積丹半島は北海道で唯一海中公園に指定されているそうだが、それも頷ける。空の青との境界線が緩やかな弧を描いているのを見ると、地球が丸いことを実感する。

 上の写真ではわかりにくいが、岬の先端には小さな灯台がある。付近の海は古来より船の難所であったそうだ。そういう場所には、なんらかの言い伝えが残っていたりすることも多いが、ここも例外ではない。

 アイヌの言い伝えによると、チャレンカという娘が源義経を慕って一行を追ってきたが、既に海の向こうへ発ってしまったことを知り、この岬から身を投げ神威岩となった、とされる。現代では岬の先端に至る遊歩道が整備されているのだが、『チャレンカの道』と名付けられている。

 またアイヌのチャレンカの話と同じものなのか別なのか、神威岬の沖には女の魔神が住んでおり、女性をのせた船が通ると転覆させるという言い伝えもあった。元々難所であったこともあり、漁師や船乗りの間では信じられていたらしい。松前藩が岬一帯を女人禁制の地とした事実もある。

 ただ後世の研究によると、これらの言い伝えは、松前藩がアイヌの悲話も絡めて利用しつつ、奥地を女人禁制の地とするために流布したものと考えられている。ニシン漁等の権益独占を目的として、奥地への進出を防ぎたかったのである。幕府が蝦夷地を松前藩から取り上げて直轄地にして以降、女人禁制は解かれ、奥地への開拓と定住が進んでいる。現在では神威岬の突端へ向かう道に女人禁制の地の関門跡が残されている。

【写真】2004年8月
【文章】2018年6月


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