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 叫化鶏とは、鶏肉を蓮の葉で包み、さらに土で固めたあと、蒸し焼きにする料理である。包んで蒸し焼きにする料理は総じて柔らかい舌ざわりで旨味が閉じ込められるが、この叫化鶏も例外ではない。葉の香りも移るので、独特で濃厚な味わいとなる。

 叫化(あえてカタカナ表記するとジャォフォヮみたいな発音)というのは、主に中国の江南地方で物乞いや乞食を意味する言葉だそうだ。その名の通り、乞食が編み出した調理法だと伝えられており、通説は以下の通り。

 乞食がたまたま鶏を入手したのだが、調理道具もないし、調理方法もわからない。そこで鶏をそのまま泥で包んで固めて、地中に埋め、その上でたき火をしてみた。掘り出して食べてみると、肉が柔らかく非常に美味だった。羽も泥と一緒に楽にとれた。

 もちろん現代ではこの調理法が進化しており、鶏はそのままではなく下処理をするし、蓮の葉で包む方法が一般的である。この手法に長けた調理人が杭州で活躍したことから、杭州の名物料理にもなっているが、中国南部の他の土地でも叫化鶏を名物と謳うお店はあるようだ。

 はじめは葉や土の香りが苦手に思われる方もいらっしゃるかも知れないが、食べていると慣れてくるようにも思う。日本ではあまり見かけることはないが、中華料理の懐の深さのようなものを感じる逸品だとは思う。おそらく下処理や味付けによって、店による差が大きく出そうなのだが、短期旅行者の私がたくさんのお店で試せたわけでもない。機会があれば、いろいろな店の叫化鶏を食べてみたいものだ。

【写真】2007年8月
【文章】2018年6月


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