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 四川省の省都である成都に、琴台路という通りがある。成都で旅行者も訪れる繁華街と言えば、春熙路や錦里、寛窄巷子が有名であるが、それらに比べると規模は小さく、人も非常に少ない。

 しかしこの琴台路も綺麗に整備され、趣のある街並みになっている。私的には若干綺麗すぎる、すなわち無理に作られた感が否めないが、決して悪くはない。以前の記事でも再三書いてきているが、街並みを丸ごとものすごいスピードで作り変えてしまうような中国政府の観光業への力の入れようは、本当に圧倒されることも多い。

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 こちらは通恵門通りに接した入口の門。なかなか立派だ。

 この琴台路はここから南へ1㎞弱、それほど長い通りではない。青羊宮のそばの文化公園の東側に位置しているので、寛窄巷子から青羊宮まで歩いていくときに、立ち寄られるのが良いと思う。

 通りには土産物屋の他、宝石販売のお店が多かった。それらに混じって飲食店などもある。

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 この通りのモチーフは司馬相如と卓文君の逸話で、漢代の街並みや文化を表しているとのこと。

 確か出典は『漢書』の司馬相如の列伝だったと思う。非常に簡単に書いておくが、司馬相如は漢代の成都出身の文人である。お金持ちの娘で才色兼備の卓文君と恋仲になるが、司馬相如の家柄が高くはなく両親に受け入れられなかったため駆け落ちし、他人の嘲笑にもめげずに夫婦で酒場を切り盛りするなど苦労を重ねた後、両親にも認められ、皇帝にも詩の才を認められて出世したとの伝が残っている。

 司馬相如が官吏に召し抱えられて偉くなったとき、卓文君を捨てようという考えが頭をよぎり、何も書かない空白の詩を送ったが、賢い卓文君はすぐに意図に気付いて返歌を送り、司馬相如は大いに自分を恥じた、という話も残っているが、残っている詩は後世の作というのが通説で、どこまでが本当かはわからない。

 ただ、そんな二千年も前の話を、頭の中で想像しながら街を歩いてみるのも楽しいものだ。

【写真】2015年1月
【文章】2019年6月
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