20171028_130200A

 魯智深と言えば、中国の怪奇小説『水滸伝』に出てくる人物である。もちろん水滸伝が基本的には架空の話であるので、登場人物もほぼ架空である。魯智深はたくさんの英雄豪傑が出てくる水滸伝の中でも1,2を争う人気のキャラクターだと言ってよいだろう。

 水滸伝を読んだことのある人には言わずと知れたことであるし、読んでいない人に説明するには書ききれないので、人物についての詳細説明は割愛させて頂くが、その義侠心や勇気が溢れる言動と直情型でたびたび大失敗をやらかす人間臭さが大きな魅力だと思う。

 物語中では義侠心から悪徳商人を殴り殺してしまい、助けた父娘の手引きをきっかけとして、かくまわれるように入った五台山で出家する。以降、僧侶の姿で活躍するので、後世に描かれる絵や像などはほぼ僧形である。

 とはいえ、元は架空の小説なので、各地で見られる像にしても、千差万別で面白い。私の旅行写真で残っている中にもいくつか見つけたので、まとめておく。他にもあったかも知れないし、写真に残っていないのもあるかも知れない。

 上の写真は開封市の萬歳山。たぶん私が今まで見た魯智深の像の中では一番かっこよかった気がする。

20171028_142008A

 こちらも開封の万歳山で、武松(右)とのツーショット。物語中でも二龍山で一緒に山賊をしていたり、行者と僧侶で行動を共にすることも多かった。

 ちなみに開封は水滸伝の舞台である宋の時代の首府で、物語中にも多く出てくる。魯智深が大相国寺で柳を引き抜き、林冲と出会うのも開封である。水滸伝や魯智深となじみのある都市とも言える。

DSC_0353

 こちらは山東省の梁山。まさに梁山泊があったとされる場所である。もちろん水滸伝は架空であるが、数十名の山賊が籠っていたという元の史実はある。そして水滸伝の梁山泊が実際にあったとすればここだ、とされている山は、現代では広大なテーマパークのようになっている。ただしそれは我々が想像するようなテーマパークではなく、梁山泊っぽい忠義堂やら砦などが作られているだけの、一見すれば史跡公園のような場所である。

 ここは丁寧に百八星の多くの像があった。水滸伝ファンとしては、あまり原作では日の当たらないキャラクターも像になっていてうれしい限りだった。とはいえ、魯智深像は、手の甲や服の皺などがリアルに作られているのに、なぜか質感に乏しいのは気のせいだろうか。

 なんだか李逵が混ざってない?身に着けているものでかろうじて魯智深だとわかるけれど。

P1030479

 こちらは杭州の六和寺。

 物語の最後(正確には百二十回本の最後)、魯智深はこの杭州の六和寺で海嘯の音を聞き円寂した、となっている。六和寺や海嘯については以下の過去記事に書いているのでご参照頂きたい。



 聞き耳を立てているように見える像は、おそらく海嘯の音を聞いていることを表現したかったのだと思うが、私的には音を聞いて悟りを開いているようには見えないと思う。

 一応物語の最後なので、一番歳を取っているはずなのだが、ここの像が一番若く見える。そういえば髭がないからか。原作で六和寺に残るときに髭を剃った表現があったかなぁ?と思ったが、覚えていない。

 まぁ元は小説なので、表現や解釈が色々あるのも悪くはない。あまりに原作の描写からかけ離れすぎるのはどうかと思うが。

【写真】開封:2017年10月、梁山:2014年8月、杭州:2007年8月
【文章】2019年7月


にほんブログ村 旅行ブログへ