最果志向 ~放浪家坂木さんの足跡~

この数十年の放浪履歴を元に思ったこと・感じたことなどを訪問者の目線で綴る『旅エッセイ』ブログ。たまに自作の音楽の紹介。

東北 Tōhoku

【坂木より】
2016年6月2日開設。現状一日1~2記事の更新です。皆様と『最果(さいはて)志向』と『漂泊の思い』を共有できれば幸いです。たまに昔作った音楽も公開しています。

飛島と日本海の青

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 山形県と秋田県の県境の海岸線付近、すなわち酒田や鳥海山周辺からは、天気が良ければ日本海の向こうに、飛島という比較的平べったい島を望むことができる。酒田市に属する離島で、山形県唯一の有人島である。とはいえ、酒田市よりも秋田県の海岸線に近い場所にある。

 酒田の港から船で行けるのだが、私は訪れたことがない。そもそも日本中を結構ふらりふらりと放浪しているにも関わらず、あまり離島には行けていない。車の放浪旅が多かったので、費用や時間のかかる島嶼への訪問は『またの機会に』と思ってしまうことが多いのだ。だから飛島も何度も眺めたことがあるものの、『そのうち行こう』と思い続けてきた。

 しかしこの空と海の青の世界の中に、ぽつりと浮かんでいるような島は、いったいどんなところだろう、と思う。もちろん現代ではネットで調べると色々な情報や写真が出てくるわけだが、放浪癖のある人間というのは、自分の眼で、耳で、肌で、その土地を感じたくなってしまうのかも知れない。

【写真】2014年9月
【文章】2018年10月

萌えてみる?青森ケイリン

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 この時は鉄道旅だった。青森駅で長めの乗り継ぎ時間があったので、少し外に出てみることにした。

 駅前のロータリーで派手なピンクのバスが目を引いた。萌えキャラがでかでかと描かれている。痛車ならぬ痛バスだ。

 『萌えてみる?青森ケイリン』
 競輪場の無料送迎バスらしい。

 大きく描かれているのは、葵萌輪(あおいもりん)というイメージキャラクター。青森と萌えと競輪を合体させたのだろう。こういうなのは凝ってヒネりすぎた名前よりは、安直でもわかりやすいほうが良い。

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 もちろん横にも描かれている。

 昔、競輪、競艇、競馬などの公営ギャンブルは、こんな華やかな雰囲気ではなかったと思う。もっと胡散臭いというか、怪しい雰囲気もあったと思う。青森競輪のホームページを見てみたら、軽いカルチャーショックだ。もはや何のページだかわからないくらいである。
 ※青森競輪:http://www.aomorikeirin.com/morin/index.html

 それだけ若い世代をターゲットに、まずは興味を引こうとしているのだろうと思う。昔に比べて娯楽の種類が増えた。それにデジタルコンテンツが都会でも田舎でも差異なく手に入るようになっている。公営ギャンブルを含めて娯楽やレジャー業界も、新たな客層の開拓やサービス開発をしないと立ち行かないのは自明である。思えば娯楽でさえ需要よりも供給が溢れるようになってくるなんて、なんと贅沢で豊かな時代であろうか。

【写真】2014年9月
【文章】2018年7月

奥入瀬濁流と旅という点の記憶

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 青森県の奥入瀬渓流は、奥入瀬川の美しい流れや豊かな自然、奇岩などの調和が素晴らしい景勝地で、国の天然記念物になっている。

 私は青森はおろか東北地方や北海道にはあまり縁がなく、住んだことも無ければ親戚もいない。なのに、なぜか奥入瀬渓流には三度ほど来た覚えがある。放浪旅のついでに、ふらりと立ち寄ってしまうのだ。

 ところで、私が一人旅の時は晴れることが多く、暑すぎて閉口することもよくある。しかし家内と共に旅をすると家内が一番見たいという場所では、よく雨が降る。この時の奥入瀬も雨が降った。

 普段は優しく心地よい音を奏でる渓流も、雨が降っている時やその直後には、力強い濁流となって轟いている。だが自然とはもともと千変万化で、これも奥入瀬の一つの表情である。家内は初訪問であったので悪天候を悔しがっていたが、旅の天気もまた縁というものである。

 旅先を訪れた時、特にカメラを構えた時などに、『青空だったらいいな』とか、『この時間は逆光になってしまう』とか、『今日は週末で人が多くて静かな雰囲気が楽しめない』などと思うこともよくある。住んでいる場所の近くなら、天候や時節が良いときを狙って出直せば良いが、旅ではそうはいかない場合がほとんどである。

 だから常々思うのだ。どれだけその土地が好きでも、何回も訪れても、やはり旅行者はその土地に寄り添うことはできない。訪問した時点の視点や記憶でしかないのだ。点と点は繋ぐことはできないし、線にはできない。しかし点でしか見えないからこそ、見えたり気付いたりすることもある。

【写真】2002年8月
【文章】2018年3月

遠野の河童に因んだ人形 (岩手県)

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 岩手県の遠野と言えば、この地方の逸話や伝承をまとめた柳田國男の『遠野物語』を連想する方も多いかも知れない。

 遠野物語の中には河童についての伝承がいくつか記載されている。現代では河童は遠野のシンボル的な存在にもなっており、あちこちで像や人形などを見かける。

 で、写真の像だ。よくわからないが、手前の河童と猫の石像と、その脇の交通整理をしてそうな河童人形とは、明らかに作風やモチーフが違う。仮置きされていただけなのかも知れない。

 しかし、それにしても周囲の長閑な雰囲気の中で、杜撰に置かれている像や人形のアンバランスさや違和感は、なかなか形容し難いものであった。

 背後には懐かしい赤い円柱型の郵便ポストがある。この設置位置も不可思議だが、更にポストにはなぜか生首のような頭部が生えている。そしてその頭は安全ヘルメットをかぶっている。もういったいどこの異世界に迷いこんでしまったのか、という気分になる。

 ただ、その異世界的な感覚は、遠野物語を読んでいる時に感じる不思議な感覚と似ているような気もするのだ。偶然なのか、その効果を狙ってのものなのかはわからないが。

【写真】2014年9月
【文章】2018年1月

最上川で見た簗 (山形県)

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 このときはちょうど昼前に喜多方に着いてラーメンを食べ、そのまま北上して米沢、そこから最上川に沿ってドライブをしていたかと思う。いつも通りの宛先のない放浪であった。
 休憩がてらに立ち寄ったところで、川に簗(やな)を見つけた。

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 簗(あるいは梁、両方とも読みは『やな』)とは古来からある魚を獲るための仕掛けである。仕組み自体はご覧になればすぐに理解できるとは思うが、誘導されてきた魚の流路を塞ぐことで、魚を捕獲する。

 この簗は川上に向けて設置されており、下り簗と呼ばれる。川下に向けているものはご推察の通り、上り簗である。治水工事の技術革新とともに簗の仕組みも改良が加えられたりして、昔は上り下りの分類だけでなく色々な形のものが各地にあったようだ。

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 放浪ドライブをしていると、簗・梁と付く地名は日本全国でチラホラ見かけるように思う。中でもヤナセ、ヤナガワ、ヤナサワなどの『ヤナ+川や水に関する用語』で構成されている地名が多いと思うので、おそらくその多くは近くの川に簗があったことから付いたのであろう。

 後世に柳の字をあてて栁瀬・柳川などとしている場合もあるようだ。こちらは元々柳の木が由来である可能性もあるので一概には言えないが、例えば九州の柳川市でも古文書では簗川と記載されていた事実があるなど、あながち可能性のない当て推量というわけではない。
【写真】2012年7月
【文章】2017年8月
  
プロフィール
管理人:坂木
ただ行けるところまで行ってみたい。何もなくても構わない。何もないことを見に行く。そんな性癖を勝手に最果(さいはて)志向と名付けた。
職業は会社員。休みのたびにあてもなくフラリ旅に出てしまう。



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    2016/6/2開設