最果志向 ~放浪家坂木さんの足跡~

この数十年の放浪履歴を元に思ったこと・感じたことなどを訪問者の目線で綴る『旅エッセイ』ブログ。たまに自作の音楽の紹介。

山東省

【坂木より】
2016年6月2日開設。現状一日1~2記事の更新です。皆様と『最果(さいはて)志向』と『漂泊の思い』を共有できれば幸いです。たまに昔作った音楽も公開しています。

金声玉振と情報感度

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 山東省曲阜は孔子の生地として知られており、孔子ゆかりの孔廟・孔林・孔府がユネスコの世界遺産に登録されている。街中も孔子一色で、孔子の像や論語の一節が書かれた碑やグッズなどを多く見かける。

 写真は世界遺産の孔廟の入り口付近。大きく「金聲玉振」と書かれている。賢くて徳がある人を指しているが、これは孟子が孔子を評した一説からの言葉である。
 孟子曰、「伯夷、聖之清者也。伊尹、聖之任者也。柳下惠、聖之和者也。孔子、聖之時者也。孔子之謂集大成。集大成也者、金聲玉振之也。金聲也者、始條理也。玉振之也者、終條理也。始條理者、智之事也。終條理者、聖之事也。智、譬則巧也。聖、譬則力也。由射於百步之外也。其至、爾力也。其中、非爾力也」
『孟子』巻10・万章章句下
 とっても簡単に要約すると…
 孔子は色々な聖人の集大成。集大成とは金聲して玉振るということ。玉振とは楽曲の始めに鉦を鳴らすことで、曲の条理を産み出す智の技。金聲とは楽曲の終わりに聲を打つことで、曲の条理を締めくくる聖の力。矢を的に射るにも、力がないと届かないし、技がないと当たらない。孔子は智と聖を兼ね備えた聖人である。

 私は自分を知識人だとは思っていないし、世の中で知らないことは山のようにあって歯痒い思いばかりなのだが、この門を孟子に想いを馳せて通れるのは知識や教養のおかげかと思う。

 確かに現在では知識のあり方も少し変わってきた。上述のことなど、ネットで調べればすぐに出てくるし、昨今では知識なんて不必要でネット検索で十分、検索力こそが大事、なんて意見も聞かれる。特にビジネスシーンにおいてはあながち間違いではないとも思う。しかし。それならば、なぜ大勢が通っていたこの門で言葉の意味をスマホで調べている人を一人も見かけなかったのだろうか。写真すら撮らずに素通りする人が大多数なのだろうか。皆が孟子の一節を諳んじていたとも思えない。

 ビジネス上で出てきた未知の情報は必要だから調べる。でも旅先や日常生活で出会う未知の情報は膨大かつ多様で、しかも知らなくても困らない。この知ることが必須ではない情報の中からどれだけを刺激として受け取れるか、孟子の一節は知らなくても確認してみようと思えるのか、つまり情報への感度は、持っている知識や教養に依るところも大きいのではないかと思うのだ。だから私はもっともっとたくさんのことが知りたい。

【写真】2014年8月
【文章】2023年8月

面筋屋台

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 以前の記事でも紹介したことがあるが、面筋とは日本で言うところの麩である。中国の屋台フードとしては定番のようで、串焼きの面筋は色々なところで見かける。

 私的にはそれほど好物というほどではないが、酒の肴にも悪くはないし、ヘルシーである。庶民料理が全体的に脂っこい中国では、胃腸休めにいいのではないかと思えるほどだ。なによりこういう風に白煙を立てながら焼かれている屋台は『視覚的に美味しい』のだ。

 写真の屋台は面筋の他にも饃干や魚豆腐などと書かれているが、それらが売られているようには見えない。

 日本では麩をこのように串焼きにして食べるのは見たことがないし、当然ながら屋台で売られているのも見ない。しかし、日本でもやってみればそれなりに売れたりして。

【写真】2014年8月
【文章】2019年2月

謎多き水滸伝の作者と施耐庵の像

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 中国では四大奇書の一つに数えられ、大変な人気と知名度を誇る水滸伝。しかしその作者はよくわかっていない。

 通説では施耐庵が最有力の候補とされているが、この施耐庵には他の作品が一切ない。彼について記された書物もあるにはあるが信頼性に乏しい。実在したかどうかさえ怪しまれている。

 三国志演義の作者とされる羅貫中も水滸伝の作者候補の一人である。が、この羅貫中にしても、来歴不明であるし、水滸伝を書いたことも断定できない。

 そもそも民間伝承の物語であったものを、明代に幾人かのグループで調べてまとめ、一つの物語として書き上げたと考えるのが、私的には一番納得の行く説明に思える。そのグループの名前というか人称化したものが施耐庵なり羅貫中なりだったのだろうと思う。もちろん私の勝手な想像で、学説ではない。

 とすると、上の写真のような施耐庵の像というのは、元々存在しないことになってしまうのだが、結局は想像にすぎない。恐らくこれからも解かれないかも知れない謎に想像を巡らせてみるのも、私は嫌いではない。

【写真】2014年8月
【文章】2018年10月


中国旅行中に建築現場の大規模火災に遭遇

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 バスで泰山を抱える山東省泰安の街を後にした時だった。確か高鉄泰安駅を過ぎて少しばかり、さらに郊外の山間部に進みかけた頃合いだったと思う。

 道路の脇に火山の噴火のような巨大な黒煙が立ち上っているのを、バスの車窓から見つけた。バスが近づいていると、どうやら噴火などではなく、建設現場から吹き上がっているようだった。

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 もしかしたら特殊な作業などで煙が上がっているのでは、と希望的に考えてみたりもした。しかし脇の道路を走ると、大きな火の手があちこちで上がっているのが見えた。やはり火事だ。しかもかなり大規模である。

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 クレーンにも部分的に引火しているようだった。かなり大規模な火災に間違いない。

 ただし、消防車が止まり始めていて、道路は少し混んでいたものの、渋滞という程でもでもなく、バスはまもなく順調に進み始めた。おそらく火災が発生してから、それほど時間が経っていなかったのだろうと思われる。その割にかなりの火の手が上がっていたのは、やはり建設中の現場に引火しやすいものが置いてあって、一気に広がったのだろうと思ったりもした。

 
 以前から何度か記していることであるが、やはりトラブルやアクシデントなどがあった場合は、その被った不便の大きさに依らず、覚えているものだ。(参照タグの記事:旅のトラブルやアクシデントは記憶に残りやすい

 もちろんトラブルや事件などはないに越したことはないし、自ら飛び込んでいくわけではなく、なるべく避けようと思う。それでも出会うことは多いし、楽しかった記憶よりも残っていたりもする。しかも後に想い出す時には、当時の不愉快だったり怖かったり居たたまれなかったりした想いは薄れ、出来事だけが思い出として昇華していることが多い。人間の『忘れる』ことによる精神衛生上の自己防衛機能だろうとは思うのだが、つくづく人の記憶とは不思議なものである。

【写真】2014年8月
【文章】2018年9月

泰山の階段

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 中国の名山であり世界遺産の泰山。標高は1500m程度であるが、古より宗教的な色合いも濃く、文化的な価値も高い。登る道の途中には、奇岩、道観、岩に刻まれた文字が点在しており、絶景ポイントも多々ある。実に多彩な表情を見せる仙境である。

 だが泰山で一番印象に残っているのは、永遠に続くかのような急階段かも知れない。現代では登山道もそれなりに綺麗に整備されていて、仙人でなくとも容易に登ることはできるのだが、長い長い階段を進むことになる。


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 これは少し小高い場所から遠くを撮ったもの。

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 一つ上の写真を撮った場所から、遠くに見えていた建物まで来るのに約1時間。私は健脚なほうだとは思うが、それでも一気に登るのは無理だ。

 ちなみに泰山のふもと、泰安の街からはバスが中腹まで出ている。バス停から歩いて登って、頂上まで約2~3時間だったと思う。

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 途中で段に座って休む人、ゆっくりと一歩一歩進むご老体、みんな励ましあって挨拶したり、にっこり笑いかけたりする。そういうのは世界共通の気がする。同じ苦労をしていることによる仲間意識や共感が為せる業なのだろうと思う。

 中国の他の名山でもそうだったが、結構サンダル履きや普通の革靴などで登っている人も多い。ヒール付きで登っているツワモノもたまに見かける。たぶん安全等に対する意識の低さもあるのだろうと思うが、反面に日本では自分なりの判断やスタイル確立の前に、先入観や形から入りすぎている部分も大いにあると思う。

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 実は、延々と階段を登らなくても、ロープウェイで頂上近くまで行くことができる。時間が無かったり、体力に自信がなければ、それも良いだろう。

 しかし個人的な考えとしては、こういった宗教的な意味合いを持つ山というのは、頂上への到達自体に意味があるわけではなく、登るという行為の中で様々な風物に出会ったり、苦労をしたりすることに意味があるのだろうと思う。

 ただし実際のところ、中国の名山ではこのようなロープウェイで登ってしまえるところも多い。確かに観光客としては、手軽に行けるようになってありがたい。手付かずな仙境を訪れることができたら良いのだが、もしバスやロープウェイ、登山道などが整備されていなければ、本格的な装備や高度な技術を要する山も多い。難しいところだと思う。

【写真】2014年8月
【文章】2018年8月

  
プロフィール
管理人:坂木
ただ行けるところまで行ってみたい。何もなくても構わない。何もないことを見に行く。そんな性癖を勝手に最果(さいはて)志向と名付けた。
職業は会社員。休みのたびにあてもなくフラリ旅に出てしまう。



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