世界各地の大きな都市に行けばチャイナタウンがあるが、その中国語訳としては『唐人街』と表記されていることが多い。
中華系移民が大半を占めるシンガポールにも中華街があることは以前の記事でも記した通りであるが、シンガポールでは中華街の中国語表記として『牛車水』が使われていることが多い。もちろん中華街に対する訳語としては唐人街でいいのであろうけれど、中国語でシンガポールのチャイナタウンを指すときは、その地名で呼ぶのが通例のようで、写真の通り街の看板やMRTチャイナタウン駅の中国語表記にも『牛車水』が使われている。
その昔、このあたりにあった井戸に多くの牛車が水を汲みにやってきたのが由来だそうだ。チャイナタウンの中にはクレタ・アヤと呼ばれるエリアがあるが、これもマレー語で牛車+水の事をさしているのだと聞いた。
これは以前の記事の補完にもなるのであるが、異国文化の中に華僑文化の街を形成するから中華街(唐人街)と呼ばれるのであって、シンガポールで唐人街と呼ばなかったのはシンガポール人が元を辿れば大半が中華系(=唐人)移民であったからなのかも知れない。今では華僑という意識よりはシンガポール人であるという自我のほうが確立されているように思うが、昔はそうではなかったことの名残かも知れない。いつ頃からそうなったのかは調べてみないとわからない。
【写真】2009年2月
【文章】2018年4月
【文章】2018年4月