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 戦後から21世紀に入るまで、日本の都道府県で唯一、沖縄県にだけは鉄道がなかった。戦前はあったが、施設・設備は戦争で破壊されたとのことだ。アメリカ統治下による復興も、道路整備が優先され、鉄道はそのまま消滅した。沖縄本島でもさほど大きくはない島であるため、長距離大量輸送手段としての鉄道を敷設するメリットは少なかったことが理由だとは思う。

 沖縄が本土復帰を果たした1972年以来、都市近郊の輸送手段として、モノレールの敷設計画は長い間取り沙汰されていた。そして2003年、待望のモノレールが開通する。日本においてモノレールは鉄道に分類されるので、この沖縄都市モノレール・愛称ゆいレールは沖縄唯一の鉄道である。

 ただし、近代の大都市近郊の輸送手段としての鉄道で言えば、京都や福岡、仙台、横浜などの人口100万人以上の都市でも、地下鉄が開通し整備されていったのは主に1980~90年代であるし、その後も拡張・整備は続いている。都市圏に1000万人近い人口を有するタイのバンコクでも、21世紀に入るまで近郊都市交通としての鉄道はなかったのは、以前にBTS運河の舟東バスターミナルの昔話などの記事で記した通りである。都市の規模から考えても、沖縄だけが取り残されていた、とは言いきれない、むしろ進んでいるほうだと思える。

 ともあれ、この開業を沖縄県民は熱狂をもって迎え入れた、という当時のニュースは記憶に残っている。

 ちなみにゆいレールの開通により、電車が走っていない都道府県は、唯一徳島県のみとなった。これは『鉄道』ではなく『電車』の話。正確には電車が自走したことがない県、といったほうが良いかも知れないが、ともかく県内全線非電化区間なのは徳島県だけになった、ということだ。

【写真】2010年12月
【文章】2016年6月