ドイツのシュツトゥガルトの駅に着くと、近くのホームでパリ行きのTGVが発車を待っていた。
TGVは言わずと知れた、フランスの超特急である。子供の頃のことだが、当時世界最速だった日本の新幹線の最高営業速度が、ついにフランスのTGVに抜かれた、というニュースが、最初にTGVを知ったきっかけだったと思う。
TGVはパリを中心としてフランス中を走っているが、ドイツ、スイス、イタリア、ベルギー、オランダなどの近隣諸国にも乗り入れしている。国境をまたぐ列車は一般に国際列車と呼ばれる。
日本は島国であり、陸地での国境を有しないので、我々日本人には国際列車はあまりなじみ深くはない。だが、世界を見れば国際列車は結構たくさんある。例えばアジアに於いても、中国と北朝鮮、あるいはモンゴルとを結ぶ列車もあるし、以前紹介したシンガポール、マレーシア、タイとマレー半島を縦断するイースタン&オリエンタルエクスプレスもある。元は一つの国だった旧ソ連領の国々の間では、今では国際列車となり運行されている。
他にもアフリカやアメリカーカナダ間、インドーパキスタン間などで国際列車は運行されているが、やはりヨーロッパでは国際列車の運行が盛んだと思う。これはやはりヨーロッパの国々が多く加盟しているシェンゲン協定の影響もあるのかも知れない。
国際列車で国境を越える際、通常は国境の両側のイミグレーションで停車し、それぞれ出国および入国の手続きが必要である。だが、シェンゲン協定の各加盟国間であれば、国境検査なしに国境を越えることが可能である。これにより、日本で例えるなら県境を越えるような感覚で、国同士を往来することができる。
加盟国はEUやユーロの加盟国とある程度共通するが、スイス等のEU非加盟でシェンゲン協定は加盟している国もある。イギリスはその逆でEU加盟国でシェンゲン協定は非加盟国であるが、2016年6月にEU脱退が国民投票で可決されている。ユーロ、EU、シェンゲン協定、といったヨーロッパの統一的な流れからイギリスだけが浮いているのだが、これも島国由縁なのか、とふと思ったりもするのだ。もちろんそんな単純なものではないのは承知しているが。
もちろんシェンゲン協定には、誰にでもわかる致命的な弱点がある。入国審査は国や場所によって基準が異なるのだが、当然ながら少しばかり緩いところも出てくる。だが圏内に一度入ってしまえば、自由にどの国にも行けてしまう。どれだけ自国の審査を強化しようが、どうしようもなくなるのだ。2015年のパリや2016年のニースで起こったフランスのテロの記憶はまだ新しいが、ヨーロッパでテロ対策が難しいのはこういった事情もある。テロ対策の他にも、移民・難民問題も同じである。自分の国を守るためでも、一つの国だけでは決められないのだ。
だが、そんな難問が多くあるにも関わらず、ヨーロッパが一体となって進めていこうとする精神は、私はすごいと思う。例えば経済におけるユーロの強さを見ても然りだ。諸国の通貨だけでは、ユーロほどの強さを持つことはできなかったと思う。それを踏まえて、アジアはどうだろう。昔戦争などがあったことは欧州もアジアも同じだが、アジアではまだいがみあっている国々が多いのではないだろうか。旧帝国が志向した「大東亜共栄圏により欧米列強と肩を並べる」という考え方を肯定するわけではない。武力による統一や制圧では、結局最終的には共栄はできなかったのだろう。しかし、アジアの未来を見つめて、きちんと共栄していくことは必要ではないか、と思ったりする。
なんだか話が違う方向に行ってしまったので、とりあえずはこの辺りで。
【写真】2015年7月
【文章】2016年11月
TGVは言わずと知れた、フランスの超特急である。子供の頃のことだが、当時世界最速だった日本の新幹線の最高営業速度が、ついにフランスのTGVに抜かれた、というニュースが、最初にTGVを知ったきっかけだったと思う。
TGVはパリを中心としてフランス中を走っているが、ドイツ、スイス、イタリア、ベルギー、オランダなどの近隣諸国にも乗り入れしている。国境をまたぐ列車は一般に国際列車と呼ばれる。
日本は島国であり、陸地での国境を有しないので、我々日本人には国際列車はあまりなじみ深くはない。だが、世界を見れば国際列車は結構たくさんある。例えばアジアに於いても、中国と北朝鮮、あるいはモンゴルとを結ぶ列車もあるし、以前紹介したシンガポール、マレーシア、タイとマレー半島を縦断するイースタン&オリエンタルエクスプレスもある。元は一つの国だった旧ソ連領の国々の間では、今では国際列車となり運行されている。
他にもアフリカやアメリカーカナダ間、インドーパキスタン間などで国際列車は運行されているが、やはりヨーロッパでは国際列車の運行が盛んだと思う。これはやはりヨーロッパの国々が多く加盟しているシェンゲン協定の影響もあるのかも知れない。
国際列車で国境を越える際、通常は国境の両側のイミグレーションで停車し、それぞれ出国および入国の手続きが必要である。だが、シェンゲン協定の各加盟国間であれば、国境検査なしに国境を越えることが可能である。これにより、日本で例えるなら県境を越えるような感覚で、国同士を往来することができる。
加盟国はEUやユーロの加盟国とある程度共通するが、スイス等のEU非加盟でシェンゲン協定は加盟している国もある。イギリスはその逆でEU加盟国でシェンゲン協定は非加盟国であるが、2016年6月にEU脱退が国民投票で可決されている。ユーロ、EU、シェンゲン協定、といったヨーロッパの統一的な流れからイギリスだけが浮いているのだが、これも島国由縁なのか、とふと思ったりもするのだ。もちろんそんな単純なものではないのは承知しているが。
もちろんシェンゲン協定には、誰にでもわかる致命的な弱点がある。入国審査は国や場所によって基準が異なるのだが、当然ながら少しばかり緩いところも出てくる。だが圏内に一度入ってしまえば、自由にどの国にも行けてしまう。どれだけ自国の審査を強化しようが、どうしようもなくなるのだ。2015年のパリや2016年のニースで起こったフランスのテロの記憶はまだ新しいが、ヨーロッパでテロ対策が難しいのはこういった事情もある。テロ対策の他にも、移民・難民問題も同じである。自分の国を守るためでも、一つの国だけでは決められないのだ。
だが、そんな難問が多くあるにも関わらず、ヨーロッパが一体となって進めていこうとする精神は、私はすごいと思う。例えば経済におけるユーロの強さを見ても然りだ。諸国の通貨だけでは、ユーロほどの強さを持つことはできなかったと思う。それを踏まえて、アジアはどうだろう。昔戦争などがあったことは欧州もアジアも同じだが、アジアではまだいがみあっている国々が多いのではないだろうか。旧帝国が志向した「大東亜共栄圏により欧米列強と肩を並べる」という考え方を肯定するわけではない。武力による統一や制圧では、結局最終的には共栄はできなかったのだろう。しかし、アジアの未来を見つめて、きちんと共栄していくことは必要ではないか、と思ったりする。
なんだか話が違う方向に行ってしまったので、とりあえずはこの辺りで。
【写真】2015年7月
【文章】2016年11月