仕事で2度ほど、ドイツに行く機会があった。いずれもシュツトゥガルトである。
元々はシュツトゥガルトだけで終わる予定だったのだが、別の子会社の工場にも訪れることになった。日本から来てシュツトゥガルトに駐在されている方の運転で、数百キロの道程をひた走った。アウトバーンで200km/hを越えて走行している状態でタイヤが滑ったりするのはなかなか刺激的だったが、とにかく無事に着いた。
土地勘どころか予備知識さえない状態だったので、サッと地図で確認はしたが、どんなところかはさっぱりわからなかった。私の頭に少々入っているのはフランクフルトやベルリン、ハンブルクとかの大都市の大まかな位置と、ワインの産地くらいのものだ。
ベルリン方面に向かっており、道中で元国境を越えた。東西ドイツに分かれていたころの国境だ。だから旧東ドイツ領だというくらいはわかった。街に到着して、まずはホテルに一泊する。子会社に行くのは翌日の朝だ。そのホテルの前にあったのが写真の看板だ。
おぉ、チューリンゲン。名前は知っているが、この辺りがそう呼ばれているのだとは知らなかった。私がその地名を知っているのは、ワーグナーのオペラ、タンホイザーの舞台として、である。劇中の『大行進曲』にもチューリンゲンの領主を何度も称える歌詞がある。タンホイザーの中でも大好きな曲なのだが、私がたまに歌うと、家内にうるさがられる。
名前は知っているけれど、知らなかった土地。
あぁ、ここがチューリンゲンかぁ。タンホイザーの。
写真の看板を見て、そう思ったのを覚えている。
【写真】2015年7月
【文章】2017年10月
【文章】2017年10月