厦門の中山公園は市街中心近くにある都市公園である。バスに乗って何度も前を通り過ぎていたので、一度立ち寄ってみることにした。
この時はちょうど休日で、子供連れ中心に賑わっていた。私が訪れたのは南門からだったが、入口付近にはちょっとした食べ物や玩具・風船などを売る露店も出ていた。
だが突然、露店の人々は商品や荷物をサッとまとめて、足早にその場を離れた。蜘蛛の子を散らすように、というのはこのことだろう。写真の赤いバケツや袋などを持っている人々はみな露天商だ。
自転車露店の風船屋さんははやくて、もう遠くに行ってしまっている。写真右奥。
何事かと思っていたら、すぐに官憲がやってきた。恐らく公園や路上での無許可の露天販売は禁止されていて、見回りにやってくるのだろう。
彼らも露天商が逃げて行ったのは気付いていたと思うのだが、特に追いかけるわけでもない。公園をパトロールするわけでもなく、すぐに車に乗り込んで行ってしまう。
官憲が行ったのを確認すると、露天商たちはすぐにぞろぞろと戻ってきて商売を再開するのだ。ちなみに彼らが逃げ出してから、戻ってきて再開するまでおよそ1分程度の出来事である。
鷹揚というかたくましいというか。
少なくとも官憲の見回りの効果は全く無いに等しい。官憲のやる気がないのか、大目に見ているのか、見回りは単なる形式だけで事実上は黙認されているのか、癒着があるのか、捕まえきれないのか、よくわからない。
ただ、いろいろ非効率であるとは感じる。しかし実は中国でこういった情景を見たのは、この時だけではない。中国に居住経験もない単なる短期旅行者の私が何度か目撃している。つまり、こういったことは中国では頻繁にあると考えても良いのだろうと思う。
日本的な考え方だと、露店は許可してしまうか、厳しく取り締まるか、その二択になるだろうし、それは間違いだとは思わない。しかし、こういういたちごっこがそれなりに許容されている、いわば『秩序』の考え方が違う社会というのも興味深いものだと思ったりする。世界中の常識や考え方がすべて統一されていたら、何も面白くない。
【写真】2019年1月
【文章】2019年9月